戦略・戦術立案の総合的なマネジメント

戦略と戦術はどちらが大事?
戦略(意思決定)と戦術(意思表示)、あなたはどちらが大切だと思われますか?戦略の方が大切!とお答えになる方が多いかと思います。戦略が正しければ、戦術もそれについてくる、というお考えかと思います。しかし、戦略に正しい・間違いということはありません。観察をひたすら続け、常に意思決定をおこなっていくことが戦略です。
では戦術はどうか?戦術も戦略と同じように大切なものなのです。戦略を反映した戦術になっているかどうか、観察を区切りなく続けながら意思表示を行い、お客様と接し続ける。
そして、時にはそこから戦略が生まれるのです。
パン屋さんの事例でみる戦略・戦術立案

業種:パン製造小売業
店名:アンテ(仮称)
店舗数:7店舗
従業員数:正社員17名(当時)、非正規社員40名(当時)
アンテは7店舗を展開しているパン屋さんです。しかし、思ったように利益が出ず悩んでおられました。私はまず、店舗を見せていただくことにしました。そこで下記のようなことに気づきました。
アンテの店舗を見て気づいたこと
- 「売れ残り品」と記載されたPOP
- 「お買得品」と記載するようにした
- プライスカードの台紙が蛍光色
- 蛍光色では食欲がそそられないので変更した
- 扉やガラスにセロテープの跡が残っていた
- 各店で5Sを徹底的に浸透させた
- ポスターなどが邪魔でパンを焼く様子が見えない
- ポスターなどを剥がした
- 毎日100種類ものパンを焼いていたので、同じパンでも形や重量等に差があった
- 売上数値を元にパンの種類を整理した
- お客様の流れが2パターンあることに気づいた
- いろいろなパンを見て回る人
- 食パン売り場に直行する人(リピーター)
- 食パンを戦略に落とし込めるというヒントを得る
現場をよく観察し、戦術を考えることで戦略に落とし込めるヒントを見つけることができました。
どのように解決していったか
食パンを戦略の軸とすることでやるべきことが見えてきます。看板には「アンテ」と書くのではなく、「アンテの食パン」とするよう提案しました。飲食関係の看板やポスターなどは、パッと見た時に「美味しそう」「食べたい」と思わせるシズル感が大切なのです。
また、原価計算をするために、どのパンがどれくらいの時間で作れるかを1〜7で数値化してもらいました。この数値と労働時間、決算書等をもとに原価計算を行いました。その結果、一番原価率が低いと思っていたコッペパンが赤字(原価が売価を上回っている)だったことに大変驚かれました。食パンは高付加価値商品と高回転率商品に分かれていたので、価格を整理し、POP広告で違いがわかるようにしました。
その他の商品も、適切な値付け・商品名変更・形状変更することで、しっかりと利益が出るお店へと変えていきました。リピーターも増え、近くにできた競合店にも負けないお店に成長しました。
現場からしか見えないこともある
経営はとにかく戦略が命であると言われがちです。でも、全員参加の経営革新などを行う場合などは、戦術から入る方がうまくいく場合もあるのです。まずは手足に汗をかき(戦術)、そして頭の中に汗をかく(戦略)。そうすれば、身体(経営)が汗をかくことに慣れてくるのです。
新規創業などの場合、戦略立案を優先しがちで、なかなか前へ進まないことがよくあります。そういう時は、手足を使って観察に出かけましょう。1つ戦術を思い浮かぶと、1つ戦略が思い浮かぶこともあります。手足を使って観察すると、ネットだけでは得られない情報がたくさん見えてきますよ。