野中氏他『実践ソーシャルイノベーション』より、実践知リーダーシップの6つの要件について。今回は「アサザプロジェクト」を事例として、実践知リーダーシップを書いてみたいと思います。

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《長いので、お時間のおありの方・ご興味のある方のみご覧下さい》

野中氏他『実践ソーシャルイノベーション』より、実践知リーダーシップの6つの要件について。今回は「アサザプロジェクト」を事例として、実践知リーダーシップを書いてみたいと思います。
<個人の能力>
[内面的資質]1.「善い」目的をつくる能力:リーダーは信念を持つ。
アサザプロジェクトを主催する飯島氏は、バラバラだった霞ヶ浦浄化に対する地域の対応を、自らが思い描いた100年後の霞ヶ浦はかくあるべしというビジョンに基づいて結び直し、目指すべき未来の自然環境を実現する地域のネットワークのあり方を示した。
2.現実を直観する能力:リーダーは個別具体の現実のただ中で実践する。
飯島氏は霞ヶ浦の周辺を歩いていて残っていたアサザ群落を発見し、「これだ!」と感じたことがその後のアサザの里親プログラムのヒントとなった。
3.場をタイムリーにつくる能力:リーダーは文脈を読む。
アサザプロジェクトに関しては記述なし)
(他事例:三鷹市では社会関係資本を最大限に活用し、お互いを尊重し合うという暗黙の了解の元に大人の信頼関係が基盤となって、ゆるやかな意図をもって、市民協働の場がいくつも展開されている。市民や市の職員達は、飲みニケーションも使いながら様々な協働の場でつながりあっている。市の職員や市民自身が、問題意識の高い市民達の知識を結びつける場を意図的にプロデュースすることで、多様な形の市民協働を生んでいるのである。)
[実践能力] 4.直観の本質を物語る能力:リーダーはプロデューサーである。
最初は目前の課題である水質浄化のため、アサザ群落の復活という手段を見いだし、アサザの里親という形で環境教育の場を作り、そこから過去における地域の生態系を踏まえ、学区を結ぶビオトープ設置へと進む。ビオトープのデータ収集システム作りではハードメーカーを巻き込み、それまで活かされていなかった技術に活用の道筋をつける。
また、地域の伝統工法(隠れていた知)である粗朶(そだ)消波堤を復活させ、漁協などの地域団体の協力を誘発させ、それをさらに河川の上流域まで拡大して行く。霞ヶ浦周辺地域が持つ知を結び合わせて新たな関係の形を構築し、シナジーを生み出して肥料や独自ブランドの野菜など経済的価値を送出するネットワークを形成して行ったのである。
中心は、リーダーとなった飯島氏であるが、彼がその仕組みのトップいうわけではなく、彼の重要な役割は知を「つなぐ」こと、知のノード(結節点)を作り出して反応と活動を引き出すことにある。
また、このような異なる分野をつないで行くネットワークは、何らかの強制力により維持されているわけではなく、共通の価値観によってまとまりつつ部分ごとの自立性を持ち、「湖と森と人を結ぶ」「竜動的(流動的ではない)ネットワーク」として機能している。飯島氏は、ノードの形成により知を創発させプロデューサー的役割なのである。

5.現物語を実現する政治力:リーダーは自己組織化のきっかけをつくる。
アサザプロジェクトの飯島氏は、ひとつのことを単独で成立させるのではなく、いくつかのことへと連動させて、飯島氏が「欲望をデザインする」と表現するように、全体の関係性をデザインするという手法をとる。
例えば、建設省(当時)に「先進的な取り組みとしてわれわれと一緒に実験をしませんか」という提案を持ちかけたり、外来種の駆除に事業性を持たせるために魚粉肥料に加工したり、また、その肥料で育てた野菜をブランド化したりと、人間力を駆使してあの手この手を繰り出して、縦割りの壁を溶かして対立を無力化し、組織や人をつなげている。
また、小学校のビオトープNECの無線技術を活用したプロジェクトが2005年の愛知万博で「万博アメダス」として取り上げられるなど、話題を提供して活動の見える化を図っている。
<組織的に継承していく能力>
[実践能力] 6.実践知を組織する能力:リーダーは変革を持続させる。
飯島氏は、アサザプロジェクトの本質は、新しいことに挑戦し、規制の仕組みに対する流動性を創り出し、新たな関係のプラッットフォームを形成して行くことだとして、自分でなくてもそれをできる人がいればアサザプロジェクトは継続すると考えている。そのために、全国で講演をして、彼の考えや行動に共感する人たちを増やしている。
まとめると、飯島氏が小学生の子どもたちと霞ヶ浦の沿岸を歩き回った時にいちばん初めに気づいたのは、「アサザが生えているところでは波が穏やかだ」ということだった。それが「アサザを植えよう」という本質の直観となったのだが、飯島氏はアサザに関する論文を読んでこの直観を検証し、実際にアサザが波を消す役割を果たすことを確認している。小学校を巻き込んだ「アサザの里親プロジェクト」は小学校でのビオトープづくりへとつながったが、地元の高齢者の話を聞いたことで、学区ごとの生態系の違いが明らかになり、各小学校独自のビオトープづくりへと変化して行った。また、ビオトープNECの無線技術を導入することにつながり、NECを初めとする企業が里山再生に参加することにつながった。
一方、せっかく植えたアサザが波に持って行かれるという失敗を目の前にして、飯島氏は昔読んだ本で紹介されていた粗朶消波堤という伝統的な河川工法を思い出した。これをきっかけに、飯島氏は漁協や森林組合国土交通省も巻き込んだ。それがさらに、流域の里山再生へとつながって行ったのである。
このように、初めは霞ヶ浦の水質改善という取り組みだったものが、飯島氏の暗黙知的知り方によって、個別具体の物事の中にさまざまな関係性や階層性が見いだされ、霞ヶ浦一帯の里山を再生する活動へと対象が拡大し、さらには全国へと広がっている。飯島氏の活動は、現場への棲み込みに裏打ちされた暗黙知の豊かさと、より高次のレベルのポテンシャルを引き出そうとする志向性によっている。そして「虫の眼、鳥の眼」の両方によって、詳細な現実を見ると同時に、大局観で全体を包括的に関係付けている。それが新たな関係性を創り出し、新たな暗黙知形式知創発して新しいものの見方を獲得し、さらに高次のレベルへとつながっていく、というスパイラルアップ運動となっているのである。
(以下のモデルを参照ください<http://www.asaza.jp>より)。
参考:粗朶工法について<http://www.comeji-socio.co.jp/sodatan1.htm
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<p>野中氏他『実践ソーシャルイノベーション』より、実践知リーダーシップの6つの要件について。今回は「アサザプロジェクト」を事例として、実践知リーダーシップを書いてみたいと思います。</p><br /><br />
<p><個人の能力></p><br /><br />
<p>[内面的資質]</p><br /><br />
<p>1.「善い」目的をつくる能力:リーダーは信念を持つ。<br /><br /><br />
 アサザプロジェクトを主催する飯島氏は、バラバラだった霞ヶ浦浄化に対する地域の対応を、自らが思い描いた100年後の霞ヶ浦はかくあるべしというビジョンに基づいて結び直し、目指すべき未来の自然環境を実現する地域のネットワークのあり方を示した。</p><br /><br />
<p>2.現実を直観する能力:リーダーは個別具体の現実のただ中で実践する。<br /><br /><br />
 飯島氏は霞ヶ浦の周辺を歩いていて残っていたアサザ群落を発見し、「これだ!」と感じたことがその後のアサザの里親プログラムのヒントとなった。</p><br /><br />
<p>3.場をタイムリーにつくる能力:リーダーは文脈を読む。<br /><br /><br />
 (アサザプロジェクトに関しては記述なし)<br /><br /><br />
 (他事例:三鷹市では社会関係資本を最大限に活用し、お互いを尊重し合うという暗黙の了解の元に大人の信頼関係が基盤となって、ゆるやかな意図をもって、市民協働の場がいくつも展開されている。市民や市の職員達は、飲みニケーションも使いながら様々な協働の場でつながりあっている。市の職員や市民自身が、問題意識の高い市民達の知識を結びつける場を意図的にプロデュースすることで、多様な形の市民協働を生んでいるのである。)</p><br /><br />
<p>[実践能力]<br /><br /><br />
4.直観の本質を物語る能力:リーダーはプロデューサーである。<br /><br /><br />
 最初は目前の課題である水質浄化のため、アサザ群落の復活という手段を見いだし、アサザの里親という形で環境教育の場を作り、そこから過去における地域の生態系を踏まえ、学区を結ぶビオトープ設置へと進む。ビオトープのデータ収集システム作りではハードメーカーを巻き込み、それまで活かされていなかった技術に活用の道筋をつける。<br /><br /><br />
 また、地域の伝統工法(隠れていた知)である粗朶(そだ)消波堤を復活させ、漁協などの地域団体の協力を誘発させ、それをさらに河川の上流域まで拡大して行く。霞ヶ浦周辺地域が持つ知を結び合わせて新たな関係の形を構築し、シナジーを生み出して肥料や独自ブランドの野菜など経済的価値を送出するネットワークを形成して行ったのである。<br /><br /><br />
 中心は、リーダーとなった飯島氏であるが、彼がその仕組みのトップいうわけではなく、彼の重要な役割は知を「つなぐ」こと、知のノード(結節点)を作り出して反応と活動を引き出すことにある。<br /><br /><br />
 また、このような異なる分野をつないで行くネットワークは、何らかの強制力により維持されているわけではなく、共通の価値観によってまとまりつつ部分ごとの自立性を持ち、「湖と森と人を結ぶ」「竜動的(流動的ではない)ネットワーク」として機能している。飯島氏は、ノードの形成により知を創発させプロデューサー的役割なのである。</p><br /><br />
<p>5.現物語を実現する政治力:リーダーは自己組織化のきっかけをつくる。<br /><br /><br />
 アサザプロジェクトの飯島氏は、ひとつのことを単独で成立させるのではなく、いくつかのことへと連動させて、飯島氏が「欲望をデザインする」と表現するように、全体の関係性をデザインするという手法をとる。<br /><br /><br />
 例えば、建設省(当時)に「先進的な取り組みとしてわれわれと一緒に実験をしませんか」という提案を持ちかけたり、外来種の駆除に事業性を持たせるために魚粉肥料に加工したり、また、その肥料で育てた野菜をブランド化したりと、人間力を駆使してあの手この手を繰り出して、縦割りの壁を溶かして対立を無力化し、組織や人をつなげている。<br /><br /><br />
 また、小学校のビオトープにNECの無線技術を活用したプロジェクトが2005年の愛知万博で「万博アメダス」として取り上げられるなど、話題を提供して活動の見える化を図っている。</p><br /><br />
<p><組織的に継承していく能力></p><br /><br />
<p>[実践能力]<br /><br /><br />
6.実践知を組織する能力:リーダーは変革を持続させる。<br /><br /><br />
 飯島氏は、アサザプロジェクトの本質は、新しいことに挑戦し、規制の仕組みに対する流動性を創り出し、新たな関係のプラッットフォームを形成して行くことだとして、自分でなくてもそれをできる人がいればアサザプロジェクトは継続すると考えている。そのために、全国で講演をして、彼の考えや行動に共感する人たちを増やしている。</p><br /><br />
<p> まとめると、飯島氏が小学生の子どもたちと霞ヶ浦の沿岸を歩き回った時にいちばん初めに気づいたのは、「アサザが生えているところでは波が穏やかだ」ということだった。それが「アサザを植えよう」という本質の直観となったのだが、飯島氏はアサザに関する論文を読んでこの直観を検証し、実際にアサザが波を消す役割を果たすことを確認している。小学校を巻き込んだ「アサザの里親プロジェクト」は小学校でのビオトープづくりへとつながったが、地元の高齢者の話を聞いたことで、学区ごとの生態系の違いが明らかになり、各小学校独自のビオトープづくりへと変化して行った。また、ビオトープにNECの無線技術を導入することにつながり、NECを初めとする企業が里山再生に参加することにつながった。<br /><br /><br />
 一方、せっかく植えたアサザが波に持って行かれるという失敗を目の前にして、飯島氏は昔読んだ本で紹介されていた粗朶消波堤という伝統的な河川工法を思い出した。これをきっかけに、飯島氏は漁協や森林組合、国土交通省も巻き込んだ。それがさらに、流域の里山再生へとつながって行ったのである。<br /><br /><br />
 このように、初めは霞ヶ浦の水質改善という取り組みだったものが、飯島氏の暗黙知的知り方によって、個別具体の物事の中にさまざまな関係性や階層性が見いだされ、霞ヶ浦一帯の里山を再生する活動へと対象が拡大し、さらには全国へと広がっている。飯島氏の活動は、現場への棲み込みに裏打ちされた暗黙知の豊かさと、より高次のレベルのポテンシャルを引き出そうとする志向性によっている。そして「虫の眼、鳥の眼」の両方によって、詳細な現実を見ると同時に、大局観で全体を包括的に関係付けている。それが新たな関係性を創り出し、新たな暗黙知と形式知を創発して新しいものの見方を獲得し、さらに高次のレベルへとつながっていく、というスパイラルアップ運動となっているのである。<br /><br /><br />
(以下のモデルを参照ください<http://www.asaza.jp>より)。

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