今日の藤井先生です。『三橋貴明の「新」日本経済新聞』より。

今日の藤井先生です。
三橋貴明の「新」日本経済新聞』より

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1月下旬に、「大阪都構想:知っていて欲しい事実」を公表して以来、「一騒動」と言って良いような大きな反響がありました。

実を言いますと、そもそもその「7つの事実」は、当方が詳しくまとめた「オリジナル原稿」があり、その原稿から抜粋しつつ、ごく簡単にそのダイジェスト版としてつくった原稿でした。

当初は、「嘘八百」「デマ」などという激しい批判もありましたので、あれから1月半、少しずつ当初まとめていた原稿内容をネット等を通して紹介し、適宜、「反論があれば随時、書面で供出ください」という形で反論を受け付けて行きました。

反論は2月一杯をめどに受付ておりましたが、当方の手元には理性的な反論は一通も寄せられませんでした。また一部において反論めいたものがネット上で書かれていたりもしましたが、それらを吟味させて頂きましたが、当方が確認した範囲ではいずれも当方の7つの事実の「事実性を論駁」するものは見あたりませんでした。

ついては、本日は、この「7つの事実」を前提として、これらが一体的に何を指し示しているのかについての、当方の見解をお話したいと思います。

ではまず、「7つの事実」を(その前提となる「事実0」も含めて)以下に改めて記載します(なお、「7つの事実」の元となった原稿については、近日中に全て公表予定ですが、その公表に向けて1月から文章表現を調整して参りました。ついては下記リストの表現の一部は修正されています。ただし、この7項目の内容のエッセンスは、もちろん1月末に公表したものと変わりません)。

【事実0】今回の住民投票の対象は「大阪市民」.それ以外の「大阪府民」は対象でありません。

【事実1】今回の住民投票で決まっても,「大阪都」にならず「大阪府」のまま。

【事実2】今の「都構想」は,大阪市を五つの特別区に分割する「大阪市五分割」の構想です。

【事実3】大阪市民は、年間2200億円分の「おカネ」と「権限」を失います。

【事実4】2200億円が様々に「流用」され、大阪市民への行政サービスが低下するのは決定的。

【事実5】特別区の人口比は東京7割,大阪3割。だから大阪には東京のような「大都市行政」は困難。

【事実6】東京23区には「特別区はダメ。市にして欲しい」という大阪と逆の議論があります。

【事実7】東京の繁栄は「都」の仕組みのおかげでなく,「一極集中」の賜(たまもの)です。

この「7つの事実」が示唆しているのは、次のような話ではないかと、筆者は考えています。

……

まず、今回の住民投票は、「都構想」に対するものとは呼ばれていますが、その実態は、大阪市を解体し、大阪市民が自治を失うことを意味しています(事実2,事実1)。

もちろん、特別区民としての自治は始まるのですが、自治権それ自身が縮小し、2200億円分の財源と権限を大阪府に譲り渡す事になります(事実3)。

ところが、その大阪府では、都心の大阪市人口は、たった3割にしか過ぎませんから(事実5)、その2200億円のおカネは、大阪市以外の7割の府民の意向が大きく左右することになります。

その結果、その大阪市民の2200億円のおカネが様々にロンダリング(転用)され、他の自治体の道路や下水道に流用されたり、近年、大きく膨らみ始めた大阪府の借金に流用されていくであろうことが、決定的となります(事実4)。

言うまでも無く、流用された分だけ、大阪市民が受ける行政サービスが低下していくことになります。

もちろん、その結果、何が起こるのかは、断定できませんが、その2200億円と共に大阪府に譲り渡された行政サービス項目はいずれも、低下していくリスクを抱えることとなるのは間違いありません。したがって、都市計画や道路、大規模公園、下水道、港湾等の各種の「まちづくり事業」に加えて、高等学校、大学、特別支援学校、精神保健福祉センターなどの各種事業はいずれも、そのサービスレベルが低下するリスクを抱えることとなります。

すなわち「都区制度」というものは、財源と権限を吸い上げられる特別区に取ってみれば、大変に「損」な話なのです。それが証拠に、東京23区には「特別区はダメ。市にして欲しい」という大阪と逆の議論がずっとかさねられてきているのです(事実6)。

以上の事実を踏まえれば、現在の協定書から浮かび上がるのは、「大阪市民」にとってみれば、都構想というものは、「おいしい話」でも何でもない、という実態です。むしろ都構想は、大阪市民にとってみれば大変に「損」な話なのです。

ただし、それは大阪市民にとっての話であって、大阪府の立場にたてば、たいへんに「おいしい話」だという姿が浮かび上がります。なんといっても、大阪府は2200億円の財源とまちづくり等の権限を吸い上げることができるからです。

おりしも、近年借金が急激に膨らみ、大阪市の借金の4割近くも多い6.4兆円もの多額の借金を抱える大阪府にとっては、「都構想」は、まさに渡りに船です。

しかも、多くの人々は、東京の繁栄と大阪の衰退を対比させ、大阪も東京の様な都区制度を導入すると、同じように繁栄できる糸口をつかむことができるのではないか、という漠然としたイメージをお持ちです。しかし、それは完全なる事実誤認です。東京が繁栄しているのは、都区制度のおかげなのでは無く、ただ単に、東京に「一極集中」しているからに過ぎないのです(事実7)。

だからこそ、今、大阪府側は、その権限と財源を吸い上げるためにも、都構想のポジティブなイメージを喧伝しつつ、大阪市を解体する判断を大阪市民達に直接下してもらいたいと考えているとしても、決して不思議ではないのです。そして、大阪市民が自治権を放棄し、大阪府におカネと権限の一部を大阪府に譲り渡すような「とんでもない話」を自分たちで認めてしまうことを、大阪府側は、じっと見守っている──と解釈することもできるのではないかと思います。

そして万一、大阪市が、自分たち大阪府側に、権限と財源を差し出す判断を、住民投票で下したとするなら、仮にその後、大阪市民達が「しまった!」と感じ、元に戻りたいと言い出したとしても、それを決めたのが「自分」なのですから、それはもう後の祭りとなるのです。

だからこそ「都構想」という大阪府全体に関わるようなイメージで言われているものであるにも関わらず、その住民投票は、自治権の一部を譲り渡す側の大阪市民だけが対象となっているのだ───と言うことが出来るでしょう(事実0)。

───以上はもちろん、筆者の解釈です。しかし、事実0〜7はいずれも、繰り返しますが、その事実性については合理的に否定されたことがないものばかりです

だとすると、以上に述べた解釈が「自然」なものだとお感じになる方におかれては、「大阪市民にとっては、自分たちの自治を失う都構想は『とんでもない話』」だと解釈せざるを得ないでしょう。

しかも、現大阪市長(平成27年時点)が、市長就任直前の大阪府知事時代、「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」と公言しておられた事が、当時の読売新聞にて報道されています。すなわち、

「今秋に想定される府知事、大阪市長のダブル選を「大阪都構想」の信を問う最終決戦と位置づけ、「トリプルスコアで勝たないと役所は生まれ変わらない」と気勢を上げた。「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」と挑発的な言葉で市への対抗心をむき出しにし、秋の陣に向けた動きを本格化させた。」(読売新聞 2011年6月30日)
http://b.hatena.ne.jp/…/politi…/news/20110630-OYT1T00014.htm

───まさにお読み頂いた通りです。

この発言は、上に描写した、当方の「7つの事実」についての当方の解釈と大いに符合するものです。

これでは、仮に二重行政なるものが解消して行政が効率化され、一部予算が産み出されたとしても、それは結局大阪府に「むしり取られる」ことになるでしょう。

したがってこの発言をそのまま拝借するなら、上記の事実0〜7は、

「都構想とは、大阪市が権限、力、カネをむしり取られる話」

を指し示していると解釈できると言っていいでしょう。

ただしそれはもちろん「解釈」です。事実とは異なり、他者に強要できません。

しかし政策判断には、事実そのものよりもその「解釈」こそが決定的な影響を持ちます。

だからこそ、議論・言論はそもそも、事実以上に「解釈」を巡るものであり、(解釈学を持ち出すまでも無く)その解釈を紡ぐことが学問の主要部を占め、それを公表する活動こそが言論・表現活動の根幹を成すのです。

そして、そうした解釈はしばしば「真相」と呼ばれます。

したがって、以上の7つの事実を踏まえるなら、

「都構想によって大阪市民は、権限、力、カネをむしり取られ、損をする」

というのが「真相」なのではないかと、考えられるわけです。

PS
「都構想」を実現することで、行政が効率化するどころか、かえってムダが増える、というお話をいたしました。是非、下記ご試聴ください。
http://www.choujintairiku.com/fujii-tokoso3-1.html
http://www.choujintairiku.com/fujii-tokoso3-2.html

PPS
「都構想」についての各種情報、サトシフジイドットコムにまとめております。
http://satoshi-fujii.com/

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