今日の藤井先生です。都構想反対を明示してきておられますね。『三橋貴明の「新」日本経済新聞』より。

今日の藤井先生です。都構想反対を明示してきておられますね。
三橋貴明の「新」日本経済新聞』より

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
大阪都構想(8):「都市計画の力」が失われ、大阪はダメになる。

大阪都構想」は、これまでほとんど誰も経験したことの無いほどに、大変に「過激」な行政改革です。

なんと言っても、100年以上続いた「大阪市」という自治の仕組み廃止し、全く新しい「特別区」という仕組みをそれぞれの地域ごとに5つもつくる大改革だからです。

おおよそ自治体の改革というと、これまでは複数の自治体を合併するというものでした。それだけでも大変な労力がかかっていたところ、新しい自治体を5つも同時に作るのですから、それは大変な改革だと言わざるを得ません。

それだけ大変な改革をやって、一体どの様なメリットがあるのかと言えば、最も良くいわれているのが「二重行政」の解消、です。

しかし、それで文字通り、年間4000億円くらいおカネが浮いてくるのなら、やる価値もあるのかもしれませんが、都構想でなければ解消できないだろう二重行政は年間1億円くらいしかない、ということを、なんと大阪市役所自身が、実際に試算しています。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASHC22H0D_S4A021C1AC8000/

つまり、それだけ大変な大改革をやっても、得られるのは、ひょっとしたら年間1億円程度しかないかも知れない───というのが実態です。

そんな可能性すらあるわけですから、常識で考えれば、都構想については、「イメージ」で判断するのではなく、「冷静」にメリットとデメリットを見比べる姿勢がどうしても必要なのは明白だ、と言えそうですね。
(※ そのあたりについては、下記原稿の前半をご参照ください。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42509?page=5

しかも、都構想は、それは、今まで大阪市が担ってきた、ミナミやキタ、ベイエリアといった大阪の都心の「都市計画の権限」を、「大阪府」に譲り渡すものでもあります。

筆者は、都構想における最大の問題点がどこなのかといえば、まさに、この点にこそあると考えています。

具体的なお話を一つ致しましょう。

リニア新幹線は、2027年に名古屋東京間が繋がる一方で、大阪へは2045年接続する事が予定されています。

この計画通りに事が進めば、27年から45年までの18年の間、大阪にはリニアが接続されないまま放置される一方、リニアで40分で結ばれた名古屋・東京は互いに大きく発展していくことは明白です。そしてその結果、大阪の地盤沈下は決定的なものとなってしまいます。

この大阪にとっての「最悪の未来」を避けるために必要なのが、大阪名古屋東京間のリニア「同時開業」です。

リニアが大阪同時開業され、18年早く大阪にリニアが開通すれば、大阪府の人口は実に26万人(3.6%)も増え、
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/…/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82…

経済規模も年間約1.3兆円(3.3%)拡大するであろうと推計されています。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/…/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82…

「都構想」を推進する方々が推計した財政効果が、現時点で、年間平均で、おおよそ155億円と推計されている事を踏まえるなら(毎日新聞、2014年10月17日)、この1.3兆円という数字は、文字通り桁が2桁も異なる桁違いに巨大な効果です。

したがって筆者は、「都構想」の実現に血道をあげるよりは、リニア同時開業(あるいは、つい先日金沢前開通した北陸新幹線の大阪延伸)に血道をあげる方が、遙かに生産的で、大阪の人々のために役立つであろうと、筆者は考えています。

ちなみに、「都構想」を批判するなら、「その対案を!」という意見がしばしばありますが、この「リニア」だけでも十分な対案になると筆者は考えます。さらにちなみに言いますと、当方の「対案」は、リニアも服得た「大大阪構想」という、これまでの国土強靱化計画における大阪構想があるのですが….それについてはまた別の機会、じっくりお話したいと思います。
(なお、その当方の提案の原型は、今から3年近く前に公表した、下記提言書のP13に記載した『「大阪・西日本副首都構想」 10 年プロジェクト』です。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/…/…/other/fujii_seisaku.pdf )

いずれにしても、リニアの同時開業は、大阪の浮沈を考える上で最も大切な論点の一つなのですが──都構想が実現してしまうと、このリニアの早期開業が、危機を迎えてしまうのです。

なぜなら、リニア開業ためには、大阪にそれを接続するための「駅」をつくる「都市計画」(あるいは都市整備)が必要なのですが、都構想が実現した後には、そんな「都心部における都市計画」を行う「実力」を大阪が毀損させてしまうことが危惧されるからです。

リニアは、「大深度」のトンネルで名古屋から大阪にやってきます。深い地下(大深度)は、地上の地権者は関係ありません。ところが、「駅」に近づけば当然、大深度ではなく、トンネルは地上に近づいてきます。

そうなると、駅の近辺の路線整備の事業では、「地権者」との交渉が必要になってくるのです。

言うまでも無く、駅は、大都会のど真ん中にあります。そこには、実にたくさんの「地権者」がおられます。したがって、都会のど真ん中にリニアを引っ張ってこようとすれば、「駅」や「線路」を作るために、極めて複雑な、夥しい数の地権者達との権利関係の調整交渉が必要となるのです。

そして、その交渉が難航したり、不調に終われば、リニアをつくるための財源があっても、政治決断があっても、リニアは大阪には接続しない、という事になります。

したがって、たかだが「地権者交渉」なんて些細な問題だ、ということは全く無く、実際のプロジェクトを進めていく上でそれは、政治決断や財源確保に並ぶ、最も重要な要素なのです。

実際、大阪名古屋間のリニア開通にあたって、名古屋の前後一キロ区間の地権者交渉が難航し、これが、リニアの開通を遅らせるのではないかという事が、都市計画の専門家の間ではしばしば指摘されています。

そして筆者はもしも「都構想」が実現してしまえば、この地権者交渉を行う実力が大阪において大きく劣化し、それを通して、リニア大阪接続がさらに大きく遅れてしまったり、歪な形でリニア駅がつくられてしまうことになるのではないかと、強く危惧しています。

なぜなら、「大阪都」が実現すれば、そうした都市計画は全て、「大阪府」が対応する事になるのですが、大阪府には、そんな複雑な都市計画上の調整を行ってきた「経験」が全くなく、したがって、そのための「ノウハウ」「技術力」をほとんど持ち合わせていないからです。

なぜといって、そうした大都会の都市計画は、これまで全て、「大阪市」が対応してきたのであり、「大阪府」は、郊外の、地権者の権利関係が至ってシンプルな地域での開発しか担ってきてはいなかったからです。

100年以上にわたって、大都会のど真ん中で様々な都市開発を行い、ミナミやキタ、アベノ、そしてベイエリアの開発やUSJ誘致のための都市計画調整など、実に様々な都市計画を進めてきた「大阪市」には、都市計画のノウハウ、技術力が、実に多く蓄積しているのです。

そもそも大阪は、日本を代表する大都会。

大正期の大大阪時代には、東京よりもさらに大きな、文字通り、日本一の大都会だったのです。

したがって、これまで過去何十年もの間、優秀な都市計画を学んだ学生達の中には、「建設省」「国交省」に行くよりも、日本最先端の都市計画ができる大阪市に就職しよう、と考える者もたくさんいました。

ただし大阪府には、そういう傾向は見られませんでした。なぜといって大阪府は、(郊外の計画を行うことはあっても)日本を代表する都市空間の都市計画とは無縁の存在だったからです。

ところが、都構想が実現すれば、その「大阪市」は解体されることになります。そして、これまで大都会の都市計画に携わったことの無い、「大阪府の都市計画部局」が、日本有数の大都市大阪のまちづくりを担当することになるのです。

都市計画の事をよく知る専門家は、もうそれだけの理由で、「大阪はもう、ダメになるだろう」という、強い危惧の念を抱いています──。

もちろん、現在の大阪市の優秀な人材が、大阪府でも活用されることもあるでしょう。

しかし、現在の大阪市の都市計画局の人間の多くは、これからは、特別区の都市計画課で働き、大都市計画ではなく、5つの別々の特別区の「地域計画」に、それぞれの「区長」の指示に従いながら従事しなければならなくなります。

したがって、仮に、大阪府大阪市の都市計画の技術者達が活用されることがあったとしても、多くの技術者達がバラバラに働かされることになるのですから、「大阪市の都市計画の組織力」は大きく毀損せざるを得ないのは、火を見るよりも明らかです(各特別区に勤務する技術者の上司は、それぞれの区の「区長」なのです。別々のリーダーを持つ者達が、一致団結して協力な組織力を発揮することができるなぞということはあり得ません)。

さらには、当面の間は、大阪府の都市計画部局が、大阪市の人材を部下として活用する体勢が取られるケースも多発するでしょう。なんと言っても、その組織は大阪「市」ではなく、大阪「府」なのですから、そうなるのは必定です。そもそもこれまでの「会社の吸収合併」の様々な事例を振り返れば、そういう事態は容易に想像できます。

そしてもちろんそうなれば、大阪市のまちづくりの技術力が適切に発揮できないという事態が往々にして発生することになります(部下の自分の方が能力の高いような上司に仕えることほど、無駄なことは無い、ということは、誰もが知る真実、ですよね)。

そしてさらに決定的なのが、もうこれからは、優秀な都市計画を学んだ学生は、大阪には就職しなくなるだろう、という問題です。

実際、「都構想」の話が持ち上がって以来、大阪市に就職する都市計画を学んだ学生は、激減しています。実際、これまでたくさんの優秀な学生を送り込んできた大学でも、今となっては大阪市就職者がほとんど居なくなる、あるいは、「ゼロ」となっている、というケースが激増しています。

一方で、大阪「府」への就職者が増えているのかといえば──そういう傾向は、ほとんど見られません。

万一、将来的に、徐々に優秀な人材が就職する傾向が高まっていく様な事があったとしても、数年から十数年の間、人材難が続き、結果としてその組織の実力が大きく毀損してしまうことは確実だと言えるでしょう。

つまり、都構想の議論が出始めたことで、大阪の都市計画の実力は、人材の点から、着実に低減仕始めており、今後も少なくとも当面はそれが継続すること間違いない状況なのです。

こうした問題を考えれば、リニアを大阪に接続する話が、政治や財界の力でなんとか前に進んだとしても、肝心の「都市計画の力」が大阪から失われてしまっているが故に、その実現が遠のいてしまう、という最悪の未来が、十分に現実味あるものとして予期されるのです。

そして、たかだか駅を上手につくる事ができない、というただそれだけの理由で、リニア開通が遅れたり、不便な所に作られたり等、歪な形でつくられてしまい、その結果として、大阪の発展が大いに阻害され、その凋落は、今以上に決定的になっていってしまうのです。

「都構想で大阪はダメになる」───都市計画の現実という一点を見据えるだけでも、その結論は十分に受け入れざるを得ぬ「真実」なのです。

PS
「都構想」で大阪がダメになる、より包括的な理由にご関心の方は、是非、こちらを。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42509

PPS
動画でも配信しております。是非、ご試聴ください!
https://www.youtube.com/watch?v=aOxV1XxJXmc&feature=youtu.be

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。